鳥取県湯梨浜町に小さな映画館を作ろうと、大阪から移住したばかりの夫妻が準備を始めた。27、28日に最初のプレイベントを予定している。小規模でも多様な映画が見られる場を提供したいという。
柴田修兵さん(39)と三宅優子さん(36)は長男(2)の誕生をきっかけに大阪市内から移転を検討。県内のあちこちで移住体験をした。そんな中、湯梨浜町の東郷池かいわいにひかれた。ひらけた池の風景、ゲストハウス、書店、カフェ、そのスタッフとの交流。心地よく、生活しやすいと感じ、今年2月に移り住んだ。
2人とも映画好き。柴田さんは2013年に神戸市で開かれた、濱口竜介監督による即興演技ワークショップに参加し、映画「ハッピーアワー」(2015年、5時間17分)にも出演した。映画は国内外で高く評価され、主演の4人が国際映画祭で最優秀女優賞を受けた。
柴田さんはこの作品が原点となり、映画館の運営に関心を持つように。大阪ではサイレント映画に電子音楽をつけた上映イベントを手がけたこともある。
原点の映画「ハッピーアワー」上映
県内には、大手映画会社の作品がかかる映画館はあるが、常設の単館系ミニシアターはない。それなら作ろう、と思い立った。「自分たちのできる範囲の映画館ができれば」と優子さん。まずは、その都度、上映会場を手配してプレイベントを重ねて認知度を上げ、今後は機材をまかなうためのクラウドファンディングなども検討している。
映画館の名前は「ジグシアター」とした。ジグ(治具)とは、加工や組み立ての際、部品や工具の作業位置を指示・誘導するために使う器具。組み立てが済めば不要になる。「観客が映画の中に入ってしまえば映画館の設備は意識しなくなる。治具と同じ」と柴田さん。濱口監督からは「映画館(文化)とは、社会の組み立てをどこかで誘導する役割があるのかも」と後押しをされた。
プレイベントは27、28の両日を予定。27日は、「ハッピーアワー」を3部に分けて上映。3部通し2千円。28日は14時から、濱口監督がオンラインで登壇し会場の柴田さんとトークする。無料。
いずれも湯梨浜町松崎の旧桜小学校3階の会議室で。定員30人。問い合わせは柴田さん(090・1145・2992)。(角谷陽子)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル